“「官僚が悪い」という言葉は、所謂「清く明るくほがらかに」などという言葉と同様に、いかにも間が抜けて陳腐で、馬鹿らしくさえ感ぜられて…
 所詮は、陰弁慶である。私は経済学には、まるで暗い。税の問題など、何もわからぬと言ってよい。その街頭録音の場に居合せて、おそるおそる質問を発し、たちまち役人に教えさとされ、
「さよか、すんません」
 という情無い結果になるかも知れない。

私は税金を、おさめない。あんな役人が、あんなヘラヘラ笑いをしているうちは、おさめない。牢ろうへはいったって、かまわない。あんなごまかしを言っているうちは、おさめない、と狂うくらいに逆上し、そうしてただもう口惜しくて、涙が出るのである。
 けれども、やはり私は政治運動には興味が無い。自分の性格がそれに向かないばかりか、それに依って自分が救われるとも思っていない。ただ、それは、自分には、うっとうしい許ばかりだ。”

『家庭の幸福』 太宰 治 より抜粋
http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/282_45418.html


玉川上水は、都民の飲み水だから、身投げしてはいけません! 登場人物だけでなく本人まで飛び込むとはまったく…。